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伝わる自分史の作り方(10) 『病気や事故のこと』

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長い人生、病気になったり、事故にあうことは、珍しいことではありません。また、大切な人が病気にかかったり、事故に遭遇してしまうことも、ままあります。自分史を作る時、それらを書くか書かないかは、あなたにとってそれらの出来事が人生の節目、あるいは変わり目になっていたかどうかで決定すべきでしょう。例え軽い病気だったとしても、後のあなたの人生に大きな影響を与えたような場合は、しっかりと書くべきだと思います。

 

病気のことを振り返ると・・

病気のことで自分自身のことを振り返ると高校生だった時のことを思い出します。ある日、トイレに行くとお尻から出血していることが分かりました。痔にでもなってしまったのかな?いやだなー、などと思いながら病院へ行くと、痔ではありませんでした。原因究明のために内視鏡検査を受けました。結果、出血はストレス性のもので、大腸からのものだったと分かりました。特に大事には至らず、自然に治癒しましたが、その時お医者さんから聞いた話が私の中でずしりと残りました。

 

「あなたは腸のヒダヒダが人よりも緩やかだ。こういう腸を持つ人はストレスに弱く、それが原因で癌(がん)になりやすいので注意した方が良いでしょう」と聞かされました。

 

癌(がん)という病気が、今よりも不治の病と恐れられていた時代です。私は「できるだけストレスを受けない生き方をしよう」と決意しました。「そうしないと癌(がん)になって死んでしまう」と恐れていたのです。その影響で「好きなことを仕事にしよう。そうすればストレスは最小限で済むだろう」と考えるようになりました。そうなるための努力もしました。好きなこと(文章を書いたり、デザインをしたりすること)を仕事にしている今の私があるのは、高校生の時のあの病気のおかげと言っても過言ではありません。

 

このように病気は、その後の人生を大きく変えてしまうきっかけになることがあります。思い当たる人は、しっかりとそのことを自分史の中に書き記しておきましょう。

 

事故のこと

またまた私自身の体験談で恐縮ですが、車雑誌の編集者として働いていた20代後半の頃、自分が運転する車で事故を起こしたことがあります。運転操作を誤り、電柱に衝突してしまったという情けない単独事故で、他の誰かを巻き込まずに済んだのが不幸中の幸いでした。とは言っても、電柱をなぎ倒すぐらいの大事故で車は全損。私は顔面を強打し、入院を余儀なくされました。その時、私が考えたのは「バチが当たったかな」ということでした。その頃の私はかなり奔放で、心のままに行動することが多かったように思います。その結果、多くの人を傷つけたり、迷惑をかけてしまった自負があったので「バチが当たったかな」と考えたのだと思います。

 

事故のおかげで、これまでの生き方を反省することができました。人の気持ちを考えて、傷つけないように努力するようになりました。あの事故がなかったら、今頃は本当にいやな大人になっていたと思います。

 

このように事故や病気が、自分自身を省みるきっかけになることがあります。何が起きて、内面がどのように変わったか、などを、あなたの自分史に記しておきましょう。

 

そのまま表現することの難しさ

病気や事故がらみで、ツラい思い出を持つ人は少なからずいます。最愛の子供を病気で亡くしたり、自分自身の体に後遺症が残ったり、病気や事故が原因で夢を諦めざるをえなかったり・・自分の場合は幸い、病気や事故を前向きに捉えることができたので、そこから自分の人生を好転できたように思えます。

 

皆さんもそうしましょう、と言っているわけではありません。なぜなら私がここで書いているテーマは『伝わる自分史の作り方』であって、人生指南をしているわけではないからです。

 

伝わる自分史という視点でお話すると、病気や事故を前向きに捉えられて、そこから自分の人生が好転した、という場合は、そのことをしっかりと書くと良いでしょう。こういう話は好感が持てますし、読んでいて心地の良いものです。一方で恨みつらみだけになりそうな場合は、極力簡単に書くことをおすすめします。

 

(例)高校時代の夢はプロ野球選手になることだった。しかし、交通事故によってその夢はあっけなく散った。生活に支障が出てしまうほどの後遺症が残る事故ではなかったが、野球部のエースとして活躍していた私が、当時の球速を取り戻すことは一生無理だろうというのが医者の見立てだった。何も考えられない時間が過ぎ、そのまま遊んで暮らしていける余裕もなかったので、高校卒業と同時に地元の工場で働き始めた。

 

これぐらいだったら読む人に同情されることはあっても、不快にさせることはないでしょう。また、文章力がある人であれば、重くならずに病気や事故のことをありのままにじっくりと書くという選択肢もあります。病気や事故とは少し離れてしまいますが、故・吾妻ひでおさん(2019年没・享年69歳)のコミック『失踪日記』はおすすめです。自殺未遂、路上生活、アルコール中毒などの重いテーマを、軽いタッチで極上の漫画作品に仕上げています。自分史を書こうと思っている人なら大いに参考になると思いますので、興味がある人はぜひご一読を。

 

 

なお、自分史は作りたいけど、自分で作るのは大変・・という人には、プロの編集者による自分史作成サービス『親物語』がおすすめ。詳しくはホームページをご覧ください^^